※動画でご覧になりたい方は上記の『FPパパちゃんねる』よりどうぞ。

本日は住宅ローンの組み方について、実際のご相談事例でお伝えしたいと思います。

なお、ご相談者の方には事例紹介をさせていただくことにご承諾をいただいていますが、借入額は実際の金額から丸めた金額にしたり、金利は動画を撮影している令和4年4月の最新の金利にしたりと、ほぼ実例ですが、少し加工をしている箇所があることは事前にお伝えしておきます。

さて、どんな方のご相談事例かと言いますと、世帯主が40歳の方でお子様がいらっしゃる子育て世帯のAさんとBさん。

まず、ご家族構成から。

【Aさん】は、世帯主40歳、配偶者35歳、お子さんは生まれたばかりの0歳で、できたらもう一人・・・というご希望をお持ちです。

【Bさん】は、世帯主が同じく40歳で、配偶者40歳、お子さんが14歳と12歳のお二人です。

住宅ローンの基本情報

借入額は、実際のところはAさんとBさんで100万円ほど違ったのですが、分かりやすく事例比較をするということで4,000万円に統一して、お伝えしたいと思います。

返済方法はお二人とも元利均等返済で、ボーナス返済はなしの毎月の返済、金利は固定をご希望でした。

そのため、金利に関しましては、全期間固定金利の「フラット35」で、融資率が9割以下であったため、令和4年4月の最頻金利である借入期間20年以下は1.31%、21年以上は1.44%でシミュレーション。

住宅ローンの組み方(案)

実際のご相談の際にも検討いただく上での一案として、以下のような表をご用意しました。(なお、フラット35Sなどの利率引き下げと住宅ローン控除は、こちらの表では除いています。)

①は、組まれる方が非常に多い返済期間35年のパターン。毎月の返済額が12万円ほどになり、4,000万円の借入に対して、利息の支払い合計は約1,095万円。

②は、返済期間20年のパターン。このプランの意図としましては、60歳の定年までに住宅ローンを終えるため。毎月の返済額は19万円ほどになり、住宅ローン返済にかかる利息の支払い合計は約549万円。

ここで、①の35年返済のパターンと、②の20年返済パターンを比較してみますと、②の20年返済パターンは、毎月の返済額は6.8万円ほど多くなりますが、利息の返済額は①の35年返済の半分程度で済みますね。

ちなみに、住宅ローンの返済期間の考え方としては、返済期間を短くした方が合計の利息支払いは減らせるけど、毎月の返済額は増えます。

ですので、毎月いくらまでなら住宅ローンの返済に充てられるのか、何歳までに住宅ローン返済を終わっておいた方が老後を含めて安心なのかを踏まえて、住宅ローンの返済期間を設定する必要がありますね。

話をご相談事例に戻しますが、続いて、もう一案の住宅ローンを2つに分ける③について。

今回は、1つを35年返済、1つを20年返済とするパターン。フラット35で2つに分けていますので、「ダブルフラット」と呼ばれる住宅ローンの組み方になります。

一例として2,000万円ずつに分けて今回はご案内をしましたが、金額の分け方は自由で、3,000万円と1,000万円でも、2,500万円と1,500万円なども可能。

なお、この③の2つに分けた住宅ローンをご紹介した意図としましては、現役でお仕事をされる60歳までは2つの住宅ローンを返済し、定年後は1つのみの返済で良くするためです。

今回のご相談事例の金額で言いますと、60歳までは毎月15.5万円ほど、60歳以降は毎月6万円ほどの返済となり、2つ合わせた利息の支払い合計は約822万円。

この③の2つに分けたパターンを①や②と比較しておきましょう。

まず毎月の返済額は、返済期間20年とした②より、2つに分けた③の方が60歳までは毎月4万円ちょっと減らせますので、現役でお仕事をしている間とはいえ、②よりも少し家計に余裕を持つことができると言えますね。

そして、定年後の返済額は①の35年返済の場合より、2つに分けた③の方が半分程度で済みますので、年金からの返済も可能な範囲と言えるのではないでしょうか。

また、利息の総支払額も②の20年返済パターンよりは多くなりますが、①の35年返済パターンより約273万円減らすことが可能です。

ご相談者のAさんとBさんが選んだ住宅ローンの組み方は!?

さあ、まずAさんから。

Aさんは、③の2つに分ける住宅ローンの組み方を選ばれました。

選ばれたポイントは、これからお子様をもう一人と考えていることもあり、教育費等も考えると、②の毎月返済額は家計への負担が重い。一方、定年後の住宅ローン返済額も少なくしておきたいという点から①ではなく、③が良いとのお考えでした。

そして、Bさん。

Bさんは、①の組み方を選ばれました。

選ばれたポイントは、お子様が14歳と12歳で塾などの習い事等で支出が結構多いため、今の住宅ローン返済を抑えておきたいとのことでした。

また、下のお子様の年齢を考えると教育費支出もあと10年ほど。すると、教育費支出が終わってから定年の60歳までは10年ほどあり、その10年間は家計に余裕が生まれるだろうから、そこで繰り上げ返済を毎年行って、返済期間を短くしていこうと思うとのことでした。

まとめ

住宅ローンの組み方として一番多いのは変動金利、35年元利均等返済かもしれませんが、本来は家族構成(配偶者の仕事、お子様の年齢)や家計収支の状況(収入、貯蓄、教育費等の支出)等から考える必要があり、当然ながら、その人、その人によって、住宅ローンの組み方が異なって当然だと思います。

是非、ご自身に合う住宅ローンの組み方の参考となさってください。

参考:繰り上げ返済の原資について

返済期間35年で住宅ローンを組まれている方がよく言われるのが繰り上げ返済をして返済期間を短くするということです。

ただ、ファイナンシャルプランナーとしては、本当にその繰り上げ返済の原資が捻出できるのかと心配になるケースが多いのも事実です。

なお、今回ご相談のBさんの場合ですと、教育費支出が終わってから定年までは10年ほどありますし、ライフプランシミュレーション上もその期間に余裕が出る家計収支分で繰り上げ返済をすることで、60代のうちに住宅ローンを完済できそうですので、①のあえて35年返済というパターンもアリだなぁ感じた次第です。

35年返済で組み、途中で繰り上げ返済をして返済期間を短くしようとお考えの方は、具体的に、いつ、いくらぐらい繰り上げ返済ができ、どれぐらい返済期間が短くなるかも事前にシミュレーションをしておくことをお勧めします。

CFP&1級ファイナンシャルプランニング技能士 廣江淳哉