【年収103万円の壁が178万円になったら!?】パート主婦の手取りはどれだけ増えるのか!?得をする人はどんな人!?
今日は、ニュースなどでも非常に話題になっています「年収103万円の壁」が、178万円になったら!?という話を、次の大きく3つのテーマでお伝えしたいと思います。
- そもそも年収103万の壁って何か
- 103万円が178万円になった場合に、今まで年収103万円までにセーブしていた人が178万円まで働いたらどれだけ手取り収入が増えるのか。また、得する人ってどんな人か
- 年収103万円の壁だけでなく、他もセットで見直さないと効果半減
という内容です。
それでは、ご覧ください。
「年収103万の壁」とは?
まず、年収103万の壁についてご説明していきます。
これは、税金、具体的な所得税の話です。所得税というのは、収入に対してかかる税金です。
普段、セミナーや短大の授業などでも使用している、こちらの資料でご説明しますので、ご覧ください。
例えば、消費税ですが、消費税というのは、商品やサービスの金額に、そのまま税率の10%あるいは8%を掛けて、税額が計算されますよね。
ところが、お仕事をしてもらった給料にかかる所得税というのは、給与に直接かかるのではないんですね。
大きくザックリとご説明しますと、こちらのように、2段階で計算されます。
まずSTEP①として、「所得」と呼ばれるものを算出します。具体的には、「給与収入」から「控除」というものを差し引いて求めます。
そして、STEP②で、その算出した「所得」に税率をかけて「税額」を計算するんですね。
つまり、「給与収入」に直接税率を掛けるのではなくて、「給与収入」から「控除」された後の「所得」に税率をかけるということです。
そして、この2つのSTEPをもう少し細かくしたのがこちらの表です。
例えば、所得税を計算する際の給与収入というのは、1月~12月までの1年間の年収で計算をします。
また、STEP①で「所得」を算出する際も、給与収入に対して引いてくれる「給与所得控除」というものと、給与以外にも副業で事業をしていたり、不動産からの収入があったりした場合に、給与所得と合算した総所得金額というものから、さらに引いてくれる「所得控除」というものがあり、最終的に税率をかける「課税所得」というのが決まります。
なお、STEP②の税額を計算する部分ですが、所得税は超過累進課税と言いまして、一定の課税所得額を超過した部分について、税率が上がっていきまして、その課税所得額によりますが、5%~最高45%となっています。
そして、税率をかけて算出された「算出税額」ですが、さらにここから住宅ローンを借りている人が利用できる住宅ローン控除などの税額控除がされ、最終的な所得税額が確定します。
さて、細かな税制の話はここまでにして、本題の103万円の壁に戻りますが、パートやアルバイトで年収が103万円であったらどうなるかというと、こちらの資料をご覧ください。
給与収入103万円から給与所得控除55万円が差し引かれ、給与所得が48万円となります。
他に、事業収入や不動産収入がないとしますと、この給与所得48万円で所得税を計算していくことになりますが、基礎控除というものがあり、その基礎控除額が48万円であるため、課税所得はゼロとなります。
当然ながら、ゼロに税率を掛けてもゼロですから、給与収入103万円だと、所得税はかからないとなり、これが年収の壁103万円の意味でもあります。
今日は深くは話しませんが、このいわゆる「年収103万円の壁」までの収入、正確には年間の合計所得金額が48万円以下の配偶者がいる世帯主については、配偶者控除が利用可能となり、世帯主の税金が少なくなったりもします。
そういった意味でも「年収103万円の壁」と言われたりもしています。
まずは、この「年収103万円の壁」についてお話してきましたが、ここまではよろしいでしょうか。
「年収103万円の壁」が178万円になった場合に、今まで年収103万円までにセーブしていた人が178万円まで働いたらどれだけ手取り収入が増えるのか?また、得する人ってどんな人か?
続きまして、2つ目のテーマ「年収103万円の壁が178万円になった場合に、今まで年収103万円までにセーブしていた人が178万円まで働いたらどれだけ手取り収入が増えるのか。また、得する人ってどんな人か」についてお話していきます。
引き続き、こちらの資料をご覧ください。
本当に178万円になるのか、130~140万円ぐらいになるのではないかという話もありますが、ここでは年収103万円が178万円になったらとして話を進めます。
1年間の収入が178万円でも所得税がかからないようになるとしますと、まず給与収入178万円に対する給与所得控除は制度が変わらないだとしたら61.2万円ですので、給与所得は116.8万円となります。
新たな控除とかが新設されるのではなく、基礎控除の金額のみを見直すとしますと、基礎控除額を116.8万円まで引き上げる必要があり、今の基礎控除額48万円より、68.8万円多くする必要があります。
仮に、このように基礎控除額の見直しがされ、178万円までの給与収入なら、所得税がかからないとなったとします。
そして、今、年収103万円まででパート等をしている人が頑張って178万円まで働いたとしたら、どれだけ手取収入が増えるのかという話をしていきます。
というのは、103万円の壁というのは、税金の話なわけですが、それ以外にもパート収入の壁として、年収106万円や130万円など、社会保険の壁も存在するのですね。
106万円の壁と言われるのは、パート先において自身が社会保険に加入しないといけなくなる年収の基準、130万円の壁は世帯主などが加入している健康保険の被扶養者として無料で社会保険に入れてもらえる年収の基準です。
つまり、年収178万円までパート等をしたとしますと、世帯主などが加入している健康保険に被扶養者としては加入できなくなり、自身でパート先等において社会保険に加入する必要が現在の制度のままですと生じます。
要は、今まで年収103万円までなら不要だった、社会保険料の負担が新たに生じるということです。
どれぐらいの社会保険料負担が必要かを概算で出してみました。
加入する健康保険の種類や地域、さらには介護保険料がかかる40歳以上かなどにより、実際の社会保険料は異なる部分がありますが、イメージとして、ご覧ください。
健康保険は全国健康保険協会で、地域は愛知県、40歳未満で介護保険料はまだかからず、令和6年度の場合ですが、健康保険が月7,515円、厚生年金保険が13,725円となり、雇用保険も合わせた年間保険料は約26.6万円となります。
年収103万円から頑張って働いて75万円収入を増やしても、社会保険料に26~7万かかると、手取りとして増えるのは50万円弱となります。
もちろん、社会保険に加入しますと、将来の年金が増えるとか、健康保険でもらえるかもしれない手当金の対象になるなどメリットはありますが、手取りを増やすというのが国の新たな政策になるのでしたら、この社会保険料の壁も一緒に引き上げないと、効果が薄れますよね。
また逆に、税金の103万円の壁だけを引き上げた場合に大きなメリットを得ることができるのはどんな人かというと、既に社会保険に入っていて、所得税の税率が高い人ですね。
というのは、所得税を計算する際の控除が増えれば、その分、減税効果も高くなるからですね。
仮に、控除が70万円増えたとしますと、税率が20%の人は14万円の減税となり、税率40%の人は28万円の減税となりますので、税率が高い人の方が減税額は大きくなりますね。
ここまでよろしいでしょうか。
「年収103万円の壁」だけでなく、他もセットで見直さないと効果半減
そして最後に改めて、「年収103万円の壁だけでなく、他もセットで見直さないと効果半減」という話をしておきます。
先ほど申し上げた社会保険の壁106万円と130万円の見直しは、年収103万円までに抑えて働いている人にとっては必須かと考えます。せっかく103万円以上働いても手取りがそれほど増えないなら働く意欲が下がりますよね。
さらには103万円の壁で申し上げた配偶者控除の年間の合計所得金額が48万円以下の見直し、同様に配偶者特別控除の所得要件の見直しもしないと、配偶者の収入が増えた代わりに、世帯主の控除が減って世帯主が増税となるのなら、働くのを控えようという行動も生じるでしょうから、合わせて見直しをした方が良いように感じます。
今回の「年収103万円の壁を引き上げる」というのが減税をして、手取り収入が増えた人に消費をしてもらい、経済を刺激するのが目的なら、「103万円の壁」のみの見直しでも良いかもしれませんが、仕事を年収103万円までにセーブしている人がセーブすることなく働けるように、労働力の確保も目的とするなら、103万円の壁の見直しだけだと不十分じゃないかなぁと感じます。
ということで、本日は、「年収103万円の壁が178万円になったら」というお話をしてきました。
関連動画
なお、関連動画としまして、年収の「壁」103万・106万・130万・150万・201万」をまとめて解説している動画がこちらになりますので、よろしければご視聴ください。