在宅介護と施設介護について、在宅介護で受けられる介護サービスにはどんなものがあるのか、施設介護にはどんなところがあるのか、それぞれの費用や、在宅介護をするのか施設介護をするのか選択する上での考え方などをお話していきたいと思います。
公的介護保険での介護サービスについて
まず始めに、こちらの表をご覧ください。
公的な介護保険を利用して、在宅または施設で受けられる介護サービスについての一覧となっています。
下段は、「予防給付」と書いてありますが、「要支援」の認定を受けた方が利用できるサービスですが、今回は「要介護」認定を受けた方の場合でお話を進めていきますので、上段の「介護給付」の方をご説明していきます。
さて、「居宅」介護サービスと「施設」サービスと書いてあります。この違いは何かと言いますと、介護を受ける方がどこで寝泊まりするかです。
介護施設に入所して、施設で寝泊まりをするなら「施設」サービスの方になります。
介護施設について
上記表に記載のある施設についていくつかご紹介しておきます。
「介護老人福祉施設」は、「特別養護老人ホーム」や「特養」などとも呼ばれていますが、「常時介護を必要とし、なおかつ自宅で介護を受けることが困難な方」を対象にした介護施設で、原則として要介護3以上が入所の要件とされています。
施設利用にかかる費用は、所得、いわゆる収入や資産に応じて利用額が決まりますので、年金収入がそれほど多くないという方でも比較的に利用しやすい施設と言えるかと思います。
ちなみに、費用に関してましては、厚生労働省ホームページに例が紹介されていましたが、特別養護老人ホームを要介護5の方が利用した場合の1カ月の自己負担目安額は、個室なのか相場屋なのかによっても異なり、施設サービス費の1割負担ですと、多床室と呼ばれる相部屋タイプで居住費や食費、介護費用を含めて約104,000円、個室タイプで約141,300円となっていましたので、ご参考になさってください。
なお、特別養護老人ホームに入所を申し込んでいるものの、まだ入所できていない、入所待ちの方は厚生労働省の発表によりますと2022年4月1日時点において、全国に27.5万人いるそうです。
ですので、希望をしても中々入れない・・・という現状もやはりありますし、入所申込をしましても、いわゆる先着順で入所できるのではなく、要介護度等を踏まえた優先順での入所となるため、仮にやっと次の順番になって空いたと思っても、自身より優先度が高い人からたまたま入所申込が入ったら、その人が先に入所となることもあり得えます。
また、近年では、入所定員が29人以下の比較的小規模な特別養護老人ホームで、利用施設と同一の市町村に住んでいる方が入所対象となるような「地域密着型介護老人福祉施設」というものもありますので、特別養護老人ホームを探しているという方はご参考になさってください。
続きまして、「介護老人保健施設」についても少し説明をしておきます。
この「介護老人保健施設」は「老健」とも呼ばれたりもしますが、介護だけではなく、リハビリや医療などの提供もある施設です。
例えば、脳梗塞などで急性期病院に入院し、退院後すぐに在宅で生活をするのが困難な場合などに、心身の機能回復などを図りながら、在宅介護に備えるために一時的に入所したり、現状では特別養護老人ホームの入所待ちの間に一時的に利用されたりもしています。
ですので、この「老健」は長期間介護を受けながら生活をするという施設ではありません。長くても数カ月など、一時的に利用する施設となります。
今回ご説明をした「特養」や「老健」以外にも、認知症の方が共同生活をするようなグループホームですとか、民間の介護付き有料老人ホームなど様々ありますので、機会がありましたら介護施設についてもっと掘り下げてお伝えしていきたいなぁとも思っています。
居宅介護サービスについて
続きまして、介護が必要となる要介護者が寝るのは「家」で、そして様々な介護サービスを受けるという居宅介護サービスについてお話をしていきます。
まず、訪問サービスというのがあります。これは、家にヘルパーさんや看護師さんなどに来てもらって身体のケアや生活支援、さらには看護やリハビリをしてもらうものです。
また、夜、寝るのは家ですが、日中は介護施設に行って食事や入浴、リハビリ等の介護サービスを受けたり、レクリエーションがあったりして過ごすのが、デイサービスと呼ばれる通所サービスです。
午前中に家の前まで介護施設のワンボックスカーなどが迎えに来て、おじいちゃんやおばあちゃんが乗って行き、夕方になるとまた車で家まで送ってもらっている・・・そんな光景を見たことある人も多いのではないでしょうか。
朝から夕方までという形が多いかと思いますが、中には半日のデイサービスをやっている施設もありますし、時間だけでなく過ごし方なども施設により異なりますので、デイサービスを利用しようと思われている方は施設選びもする必要がありますね。
なお、2つの施設でデイサービスを利用するということも可能は可能ですので、それぞれの施設で何をしたいかをケアマネジャーの方に伝え、ケアプランを作成してもらってください。
あと、基本は家で寝る居宅介護サービスの中に、ショートステイと呼ばれるサービスもあります。
これは、1泊~数泊という短い日数を施設で寝泊まりし、食事などの生活支援や介護をしてもらい、過ごすというものです。
介護をする側が出張や旅行で家にいない場合や、介護は長期間に及ぶこともありますのでリフレッシュを兼ねて利用するというケースもあるかと思います。
さらに、在宅介護で必要となる介護ベッドや車椅子等の福祉用具のレンタルにも介護保険が利用できますし、手すりを取り付けたり、和式トイレを洋式トイレに変えたり、段差を解消したりといった介護のための住宅改修にも上限がありますが介護保険が使えたりもします。
なお、居宅介護サービスを利用した場合の費用ですが、厚生労働省ホームページに資料がありましたので、私の方でまとめてみました。自己負担割合が1割ですと、こちらの表の金額となります。
訪問で身体介護をしてもらう場合は時間により金額が異なりますし、デイサービスを利用する場合は時間もそうですが要介護度によって金額が異なったりもします。
実際に、在宅で介護を行う場合は、ケアマネジャーという専門の方が介護をどうやっていくかというプラン、ケアプランを一緒に作成してくれますので、そちらを基に介護をしていくことになります。
なお、要介護度に応じて、介護保険で介護サービスを利用できる1カ月あたりの上限がありますので、その点については、前回のこちらのコラム「公的介護保険制度」の解説でお話していますので、よろしければご覧ください。
在宅介護と施設介護を選択する際の考え方
そして最後に、在宅介護と施設介護とどちらにするかという選択のポイントについてもお話をしておきます。
まず、第一はお金の問題ですよね。やはり、在宅介護より施設介護の方が費用はかかりますから、その費用が負担できるかという問題です。介護を受ける人自身が負担することはもちろんですが、仮に足りないなら周りの家族が支援できるかということですね。
そして、費用については施設介護でも在宅介護でも問題ないとしたら、次に考えたいのはこちらです。
要介護度がどれぐらいで、仮に在宅で介護をするなら介護体制がどうかということです。
介護体制というのを具体的に言いますと、介護をする側の人数が何人ぐらいいるのか。主となって介護をする人はもちろん、見守り、病院等の付き添い含めてサポート的に介護ができる人も含めての人数ですね。
他には、介護に使える時間や介護が必要な人が住んでいる家までの距離がどれぐらいあるかも重要なポイントですね。
一緒に住んでいる人だけではなく、別に住んでいる家族等も介護を担うなら、比較的近くに住んでいないと、継続的に、サポートを含めて介護をするというのは大変になりますし、一緒に住んでいる人も仕事や子育て等踏まえて、どれぐらい介護の時間が作れるのかを考える必要がありますね。
ですので、要介護が低くて、介護体制も充実しているなら在宅介護もありでしょうし、逆に要介護が高くて、介護体制も手薄なのでしたら施設介護という選択になるかなぁと思います。
表にすると、このようになるでしょうか。
介護が必要な人にとって円満な介護も重要ですが、介護をする側にとって円滑にできる介護もより重要かと考えます。
ということで本日は、施設介護と在宅介護についてお話をしてきました。