今回は、正社員の方も、パートの方も、お勤め先で社会保険に加入されている方は、3月・4月・5月・6月に働き過ぎると、もしかしたら1年間ずっと損をすることになるかもしれないので注意した方が良いですよというお話です。

※動画でご覧になりたい方は上記の『FPパパちゃんねる』よりどうぞ。

標準報酬月額

正社員の方でもパート社員の方でも、会社で社会保険に加入しますと、健康保険や厚生年金の掛金を計算する際に使われる「標準報酬月額」というのがあります。

この「標準報酬月額」というのは、毎月の給料を区切りのよい幅で区分したもので、健康保険は第1級の58,000円から第50級の139万円までの全50等級に、厚生年金は第1級の88,000円から第32級の65万円の全32等級に区分されています。

例をあげてご説明しますと、パート社員の方で毎月の給料が83,000円以上93,000円未満の方は皆さん、標準報酬月額を88,000円として、健康保険や厚生年金の掛金を計算する際には、この88,000円にそれぞれ一定の料率、何%というのを掛けて、掛金を計算するというものです。

また、正社員の方で毎月の給料が350,000円以上370,000円未満の方は皆さん、標準報酬月額を360,000円として、健康保険や厚生年金の掛金を計算する際には、この360,000円にそれぞれ一定の料率、何%というのを掛けて、掛金を計算するというものです。

要は、健康保険や厚生年金の掛金を簡易に計算するための仕組みが、今ご説明した標準報酬月額というものです。

この標準報酬月額によって払う健康保険や厚生年金の掛金が異なってくるとも言えるわけですが、この標準報酬月額を決める際の収入って何か、どこまでが含まれるのというご質問もいただくこともあります。基本給の他、通勤手当や残業代など、労働の対価として支給されるものが対象となりますので、ご参考になさってください。

標準報酬月額の決定について

そして、健康保険や厚生年金の掛金を計算する際に使われる「標準報酬月額」ですが、いつ・どうやって決まるのか・・・これが本日お話のポイントでもあります。

なお、「標準報酬月額」は2つの決定と、2つの改定(要は変更)がありますので、まずは2つある決定からご説明していきます。

決定の内の1つは「資格取得時の決定」です。要は、社会保険の加入時にまず決まるということですね。

雇用契約等で定められている報酬がある場合は、その報酬を月額に換算して標準報酬月額が決まります。

そして、もう1つの決定は「定時決定」と呼ばれるものです。

働いてもらう報酬というのは、長期間働いていますと、昇給等があったりして変動しますよね。

ですから、その変動後の報酬に対応した標準報酬月額にしていくために、定期的に見直しがされます。

毎年1回、決まった時期に標準報酬月額の再計算をするのが定時決定と呼ばれるものです。

標準報酬月額の改定

続きまして、2つの改定についても概要をご説明しておきます。

標準報酬月額というのは、基本的には毎年1回の見直しである定時決定で決まったものが1年間使用されるわけですが、一定の要件を満たす場合には1年の途中で改定もされます。

その改定には2つありまして、「随時改定」「育児休業等を終了した際の改定」ですので、先に「育児休業等を終了した際の改定」についてご説明します。

3歳に満たない子を養育するための育児休業等を終了した後、育児等を理由に報酬が低下した場合、変動後の報酬に対応した標準報酬月額とするため、育児休業等を終了したときに、会社を通して申出をすることで、標準報酬月額の改定をすることができるという制度です。

そもそも育児休業中は社会保険料が免除されていますが、育児休業が終わり、仕事に復帰しますと社会保険料の負担も必要になります。

ただ、育児休業後、報酬よりも高い標準報酬月額になっていると社会保険料の負担もその分、多くなるので、実際のお給料に合わせて標準報酬月額も改定しましょうという仕組みです。

そして、もう1つの改定は「随時改定」と呼ばれるものです。

先ほども、標準報酬月額は、原則として毎年1回の見直しである定時決定で決まったものが1年間使われるとご説明しましたが、報酬の額が大きく変動すると、実際に受け取る報酬と標準報酬月額がかけ離れた額になることがありますね。この大きな変動が生じた際に、標準報酬月額の改定を行うことができる仕組みになっていて、これを「随時改定」といいます。

なお、この随時改定は、次の3つのすべてにあてはまる場合にのみ行われます。

①昇給・降給などで、固定的賃金に変動があったとき

②固定的賃金の変動月以後継続した3ヶ月の間に支払われた報酬の平均月額を標準報酬月額等級区分にあてはめ、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき

③3ヶ月とも報酬の支払基礎日数が17日以上あるとき

ちなみに、固定的賃金とは「基本給・家族手当・役付手当・通勤手当・住宅手当」など月単位などで一定額が継続して支給される報酬をいいます。

ここで注意したいのは残業です。

残業は固定的な賃金ではないため、残業が多くて賃金が増えた場合や、逆に残業がなくなって賃金が減ったという場合には「随時改定」はされないということです。

これ、本日のキーポイントになりますので、押さえておいてください。

ですので、年1回の見直しで1年間の標準報酬月額が決まる「定時決定」というのは、社会保険料の負担という点で考えますと、定時決定で標準報酬月額が高くなれば、1年間高い保険料を払うことになり、定時決定で標準報酬月額が低くなれば、1年間払う保険料は少なくもでき得るということでもありますので、非常に重要だということです。

定時決定を踏まえ、注意すべきこと

ですので、1年間の社会保険料負担を左右する年1回の見直しである「定時決定」について、もう少し掘り下げてお話をしていきます。

この年1回の見直しである「定時決定」の対象となるのは、7月1日時点で社会保険に入っている人で、4月・5月・6月に受けた報酬の平均額を冒頭にご説明した標準報酬月額等級区分にあてはめて算出した新たな標準報酬月額を、その年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額として決定することを言います。

要は、4月・5月・6月にもらったお給料で標準報酬月額が計算され、9月から翌年8月の1年間使われるということです。

正社員の方で、いつも以上に残業を頑張ったとか、パート社員の方で、時給の高いゴールデンウイークなどの土日祝に、シフトに多く入ってガッツリ稼いだとかで、4月・5月・6月にもらうお給料が、他の月よりもたまたま多くなると、そのたまたま多かったお給料で、1年間の標準報酬月額が決定されるということです。

4月・5月・6月にもらうお給料・・・お勤め先の締日と支払い日にもよりますが、3月・4月・5月・6月に働く分と言えるでしょうか。

この3月~6月までの働き方、正確には4月・5月・6月にもらうお給料に該当する期間の働き方、1年間の社会保険料負担に影響をしますので、ご注意ください。

なお、年1回の標準報酬月額の見直しである「定時決定」について、すこし細かな話をしておきますと、次のいずれかに該当する人は、定時決定が行われません。

・6月1日から7月1日までの間に被保険者となった人

・7月から9月までのいずれかの月に随時改定または、育児休業等を終了した際の改定が行われる人

つまり、9月から1年間の見直しになるのに、直前に社会保険に加入した人や直前に改定になった人は除くということですね。

また、4月・5月・6月のお給料を計算する際に、支払基礎日数、要は働いたり、有給休暇を取得したりしてお給料の対象となる日数が、17日未満の月がある場合は、その月は除いて、標準報酬月額が計算されます。

また、パートなどの短時間労働者の方はこの支払基礎日数が17日未満という部分につきましては、もう少し細かなルールがあります。

その点につきましては、こちらの以前の動画で詳しくご説明していますので、よろしければご覧いただければと思います。

ということで、今回は正社員もパート社員も、3月・4月・5月・6月は働き過ぎに要注意!!1年間損することになるかもしれませんということで、社会保険の決まり方、特に「定時決定」に焦点を当てお話をしてきました。

社会保険労務士&ファイナンシャルプランナー ひろえFP社労士事務所 廣江 淳哉