【パートで社会保険&扶養内の働き方】2024年10月改正短時間労働者の社会保険適用拡大&今後の制度改正予測
今回は、まず2024年10月に短時間労働者の社会保険適用拡大が一部改正されますので、その点を含めまして、パートやアルバイトをされている方で社会保険に加入するのは、加入しないといけなくなるのは、どんな時かについてお話をしていきます。
そして、制度改正が度々ありますが、扶養内で働くのを継続したいとお考えの方もいらっしゃるでしょうから、将来的にどういうなっていきそうかを、まだ確定ではありませんが、厚生労働省があるシミュレーションで、短時間労働者の社会保険適用拡大をさらに改正していくと・・・という4つの例を示していますので、そちらもご紹介したいと思います。
現在、パートやアルバイトなどをしている、あるいは、これからパートやアルバイトをするけれども、社会保険は世帯主の扶養内が良いという方は、是非、ご確認いただきたいと思います。
それでは、ご覧ください。
パートやアルバイト先で社会保険に入らないといけなくなるルール
さあ、まずパートやアルバイトをしている人がパートやアルバイト先で社会保険に入らないといけなくなるルールは、2つあります。
昔からある「3/4基準」と呼ばれたりするルールと、平成28年10月からの比較的新しい「短時間労働者の社会保険適用拡大」と呼ばれるルールです。
「3/4基準」とは?
まず昔からある「3/4基準」などと言われたりもしているルールですが、これは、パート先で同様の業務をしている通常の労働者(フルタイムで働いている人)の1週間の労働時間「および」1カ月の労働日数の3/4以上になると、パートで働いている人も社会保険に入らないといけないというルールです。
例えば、フルタイムの労働者が週40時間働いているなら3/4以上で30時間以上働く、「さらに」フルタイム労働者がひと月に20日働いているなら3/4以上で15日以上働くと、パートでもアルバイトでも社会保険に入る必要があるということです。
ポイントとしては、1週間の労働時間「および」1カ月の労働日数がフルタイム労働者の3/4以上になることですので、どちらも3/4以上の要件を満たしたら、社会保険に加入となる、ということですよ。
なお、日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて使用される人、4カ月以内の季節的業務に使用される人、6カ月以内の臨時的事業の事業所に使用される人は被保険者とはされないというルールもありますので、学生の方やフリーの方などが春休みや夏休みなど1カ月や1カ月半だけ週5日、1日8時間とフルタイム勤務の方と同様に働いたとしましても、アルバイト先等で厚生年金や健康保険に加入しないといけなくなるわけではありません。
この点もご確認いただければと思います。
さあ、3/4基準についてはよろしいでしょうか。
短時間労働者の社会保険適用拡大とは?
続きまして、2つ目のルールである、短時間労働者の社会保険適用拡大についてご説明します。
次の5つの要件を「すべて」満たしたら、パートなどの短時間労働者も社会保険に加入しないといけないというものです。
- 1週間の労働時間が20時間以上の人
- 月の賃金が8万8000円以上の人
- 2カ月を超える雇用の見込みである人
- 学生でないこと
- パート先が厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業等であること
です。
そして、今申し上げた5番目のパート先が厚生年金保険の被保険者数101人以上が、今年2024年10月からは51人以上に変わりますので、社会保険に加入する必要があるパートなどの短時間労働者の方が増えることになります。
この動画は2024年7月下旬に撮影していますが、10月からの改正となりますので、該当する人はもうパート先から話を聞いているという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
なお、この短時間労働者の社会保険適用拡大につきましては、さきほども申しましたが、5つの要件を「すべて」満たした場合に、パート先等で社会保険に加入することになります。
ポイントは「すべて」ですね。
ですから、5つの要件の内、1つでも満たしていないと、社会保険の加入対象者とはならないとも言えます。
また、これらの要件は、原則、雇用契約書等でまず判断がされます。
ただし、労働の実態が、雇用契約書とかけ離れている場合は、実態で判断されます。
一例でご説明しますと、5つの要件の1つに、「1週間の労働時間が20時間以上」というのがありました。
ですので、仮に雇用契約が週19時間だったら、週20時間以上の要件を満たしませんので、社会保険の加入対象者とはなりません。
しかし、毎週毎週残業をして、週20時間以上働いているのが常態化しているなら、他の4つの要件を満たしているなら、社会保険の加入対象者となるということです。
厚生労働省のQ&Aを見ていますと、3カ月以上継続するならと書かれていますので、たまたま残業で1回だけ週20時間以上になったとしても、即社会保険に加入とはならないので、その点はご安心ください。
なお、最初にご説明した「3/4基準」の事例を交えた説明や短時間労働者の社会保険適用拡大の5つの要件に関する細かな解説は、こちらのコラム「徹底解説・パートで社会保険「どうなると加入することになるのか?!」 ~2024年10月改正短時間労働者の社会保険適用拡大~」で行っていますので、ご覧になっていない方は是非、そちらもチェックください。
厚生労働省のシミュレーション
さて、続きましては、厚生労働省があるシミュレーションで示した「短時間労働者の社会保険適用拡大」をさらに改正していくと・・・という4つの例をお話していきます。
あるシミュレーションは何かと言いますと、厚生労働省が5年に1回行っている「公的年金の財政検証」というものなんですね。
これは、国民年金や厚生年金といった公的年金が、この先もずっと安定的に続くように、どういう風に運営をしていったら良いかというのを検討するために、様々なシミュレーションをして、それを公開しているものなんですね。
例えば、給付水準が現状だと将来的にどうなりそうかとか、経済状況などがどう変わると年金額はどうなるかとか、給付開始年齢や保険料の払う期間を変えるとどうなるかなど、本当に様々なシミュレーションがされています。
その中の1つに、短時間労働者の社会保険適用拡大をさらに改正して、パートやアルバイトをしている人で社会保険に加入する人が増えるとどうなるかという試算が4つも示されているんですね。
オプション試算結果というものに載っているのですが、こちらをご覧ください。

①:被用者保険の適用対象となる企業規模要件の廃止と5人以上個人事業所に係る非適用業種の解消を行う場合 (約90万人)
現在は101人以上の被保険者がいる企業で働く場合で、この2024年10月に51人以上の被保険者がいる企業で働く場合に改正されますが、この被保険者数51人以上とかの要件をなくすということですね。
②:①に加え、短時間労働者の賃金要件の撤廃又は最低賃金の引上げにより同等の効果が得られる場合 (約200万人)
先日も最低賃金が大幅増で改定されるというニュースもありましたが、賃金要件もなしにしようということですね。
③:②に加え、5人未満の個人事業所も適用事業所とする場合 (約270万人)
所定労働時間が週20時間以上の短時間労働者全体に適用拡大する、業種・規模によらず、個人事業所で働いている人も対象だという案ですね。
④:所定労働時間が週10時間以上の全ての被用者を適用する場合 (約860万人)
これ、すごいですね。週10時間以上働く人は、みんな社会保険に入ってくださいということですね。大幅に社会保険に加入する人が増えますね。
実は、こういった改正をした場合、年金の給付水準が数%改善されますので、国としては年金の安定的な運営のためにもパートやアルバイト等をしている人をドンドン社会保険に加入させたいという意向があるのだろうなぁと推測しています。
扶養内で働きたい人にとっては、かなり働きにくくなりますね。
ということで、本日は、パートやアルバイトをしている方が、どうなると社会保険に加入しないといけなくなるかというお話、さらには公的年金の財政検証で例示された短時間労働者の社会保険適用拡大の改正案をお話してきました。
なお、パートをされている方の扶養内につきましては、昨年から「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」というのが始まりました。こちらのコラムで詳しくお話をしたいと思いますので、そちらもどうぞご覧いただき、今後の働き方のご参考になさってください。
また、扶養内の働き方等で、新たな情報が入った場合は、お伝えしたいと思います。