【年収の壁103万円引き上げ&扶養控除】扶養控除が受けられなくなったら世帯主等はどれぐらい税負担が増えるのか?世帯主等年収別シミュレーション付き

連日、ニュースなどでも非常に話題になっています「年収の壁」ですが、所得税の103万円の壁だけではなく、社会保険の106万円の壁と130万円の壁もセットで検討するとか、住民税については別で考えるとか、色んな検討情報が出てきていていますね。

そんな中で、所得税の103万円の壁を引き上げることについては決定の方向のようですが、いくらまで上げるかはまだ見えてきていませんし、今年や来年ではなく、再来年の2026年からという情報もあったりして、いったい、いつから、そして、いくら上げるのかが現時点で私が知る限りでは全く不透明で、日々、様々な情報に接し、良い形で決まるといいなぁというのが正直なところです。

そんな様々な情報の中に、扶養控除の対象親族の収入基準も一緒に引き上げを検討という情報を目にしました。

これは、是非一緒に引き上げてほしいと思っていましたので、今回は、この扶養控除について、その仕組みはもちろん、もし103万円の壁は引き上げになっても扶養控除は引き上げられず現状のままだったら、世帯主の税負担がどれだけ増えるのかも、世帯主の年収別にシミュレーションをしましたので、お伝えしたいと思います。

それでは、ご覧ください。

扶養控除について

まず、扶養控除についてご説明します。

扶養控除というのは、対象の親族を扶養している世帯主等が受けられる所得控除です。

要は、扶養している子どもなどがいると、世帯主等の所得税などが少し減る、そんな制度です。

そして、その扶養している親族の年齢によって、受けられる所得控除の額が異なります。

こちらの表をご覧ください。

年収の壁103万円引き上げ&扶養控除(画像1)
年収の壁103万円引き上げ&扶養控除(画像1)

その年の12月31日時点での年齢で判断がされますが、16歳以上19歳未満の子、いわゆる高校生の場合ですと38万円、また、19歳以上23歳未満の子、いわゆる大学生等ですと特定扶養控除となり、63万円の所得控除を、扶養している世帯主等が受けられます。

ちなみに、16歳以上19歳未満の子に対する扶養控除38万円ですが、金額の縮小が検討されているようです。

というのも、児童手当が2024年10月に拡充され、中学卒業までの子から高校卒業までの子に対象が拡がりましたので、給付が増えた分、控除は減らそうという話があるようです。

さて、話を戻しますが、この扶養控除は所得控除ですから、税率をかける前の所得を計算する段階で引いてもらえる金額となります。

つまり、38万円や63万円といった金額がそのまま納めるべき税金から引いてくれるわけではないということです。

では、実際にどれぐらい税負担が減るかと言うと、その人の収入(所得)の額によります。

仮に、所得税率10%の人に16歳以上19歳未満の扶養親族がいるなら、38万円×10%の3.8万円が減税になりますし、所得税率20%の人に19歳以上23未満の扶養親族がいるなら、63万円×20%の12.6万円が減税となります。

そして、この扶養控除の対象親族の要件の1つに、「年間の合計所得金額が48万円以下であること」というのがあります。

例えば、子どもがアルバイトをしていて、収入はそのアルバイト先からの給与のみで年間103万円だった場合に、その子ども自身の所得税の計算方法を簡易に表したのが、こちらになります。

年収の壁103万円引き上げ&扶養控除(画像2)
年収の壁103万円引き上げ&扶養控除(画像2)

103万円の給与収入から、給与所得控除55万円が引かれ、給与所得が48万円となります。

アルバイト収入以外にない場合ですので、この子どもの年間の合計所得金額はこの48万円となり、扶養控除の所得要件48万円以下を満たすと言えます。

ここまでよろしいのでしょうか。

年収103万円の壁を引き上げる?!

そして、次に考えたいのが、年収103万円の壁を引き上げるという話です。

いくらになるかは分かりませんが、178万円という金額案も出ています。

仮に、基礎控除等が引き上げられ、年収178万円まで所得税がかからなくなったとします。

そしてその時に、扶養親族である子どもがアルバイトで年収178万円を稼いだとしますと、年間の合計所得金額はこちらの通り116万8,000円になるんですね。

もし扶養控除の扶養親族に該当するかの年間所得48万円以下という基準が変わらないとしたら、世帯主は103万円を超える収入を得る子どもについては扶養控除が使えなくなる、つまり税負担が増えることになるということですね。

そこで、扶養控除の対象親族にかかる年間所得の基準も引き上げることを検討するという情報はありましたが、あくまで検討段階です。

そのため、もし扶養控除の対象親族にかかる年間所得の基準は引き上げられず48万円のままで、年収103万円の壁のみが引き上がったことで、子どもが103万円を超えてアルバイト等をしたことで、世帯主が扶養控除を受けられなくなったら、どれぐらい所得税の負担が増えるのかを、年収別にシミュレーションをしてみました。

こちらをご覧いただきたいのですが、所得税には色んな種類の控除があります。

例えば、生命保険に加入している人は生命保険料控除というのが受けられますし、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金をしている人は小規模共済等掛金控除というのが受けられます。

そのため、この試算では控除は給与所得控除、基礎控除、特定扶養控除、社会保険料控除に限定しています。

なお、社会保険料控除も加入している健康保険が協会か組合かとか、協会なら都道府県はどこかとか、介護保険料が必要な40歳以上かどうかとか、色んな要素で年間の保険料が変わってきますので、この試算におきましては概算額として、一律、年収の15%としました。

こういった前提条件を踏まえて、参考として、ご覧ください。

年収の壁103万円引き上げ&扶養控除(画像2)

上段が、19歳以上23歳未満の子が対象親族として特定扶養控除63万円の所得控除を受けているケースで、世帯主年収を400万、600万、800万、1,000万、1,200万円で試算しています。

そして、下段が63万円の特定扶養控除が受けられなくなった場合の試算で、一番右端に上段との差額、つまり税負担が増える金額を出しておきました。

受けられなくなる所得控除額は一律で63万円なのですが、世帯主等の年収が高くなればなるほど、増える税負担額は大きくなっていっているのがご理解いただけるかと思います。

なお、下段を103万円の壁が引き上げられたという前提で考えますと、その際は基礎控除等の金額が引き上げられますので、所得控除が増え、税負担は逆に減ることになります。

子どものアルバイト収入が増えて使えなくなった扶養控除の金額38万円や63万円以上に、基礎控除等が引き上げられれば、実質、減税とはなりますね。

103万円の壁引き上げに際して、基礎控除等の引き上げが扶養控除の金額を上回るのか、そして扶養控除が適用になる扶養親族の年間所得基準48万円も一緒に引き上げられるのか、非常に気になりますので、検討の行方をチェックしていきたいと思っています。

まとめ

ということで、本日は、「引き上げられるかもしれない年収103万円の壁と扶養控除の関係について」勝手なシミュレーションを交え、お話をしてきました。

あと、個人的には、103万円の壁が引き上げた際の配偶者控除との関係も非常に気になっています。

配偶者控除についても検討するという情報が私には入ってきていませんので、どうなるのでしょうか。

年収の壁103万円引き上げ&扶養控除
年収の壁103万円引き上げ&扶養控除