「年収103万円の壁」、いくらになるか?!FP&社労士が勝手にシミュレーション&予測してみた!!

連日、ニュースなどでも非常に話題になっています年収103万円の壁を引き上げるという話ですが、何人もの知事が減収になるから賛成できないと表明されたりもし、自民党・公明党・国民民主党で協議をしているという報道もありました。

果たして、引き上げがあるのか、あるとしたら、いくらまで引き上げるのか、気になりますね。

今日は、勝手ながら、103万円の壁が引き上がるなら、いくらになるかを、シミュレーションを交え、予測してみたいと思います。

なお、そもそも103万円の壁って何と!?という方は、こちらの動画「年収の壁103万円が178万円になったら」からご覧ください。

さて、年収103万円の壁は、パートなどで働いている人が所得税という税金を払わなくても済む年収額ですよね。

他にも、配偶者控除の対象となる年収という捉え方もありますが、ここでは働いている人自身の所得税がかかるかどうかの年収基準として、話を進めます。

で、その年収基準103万円を178万円に引き上げようという話が出ていて、なぜかというと、103万円の基準ができた年から最低賃金が約1.73倍になっているから、この103万円の基準も約1.73倍にして178万円にすべきだということらしいです。

そして、こちらの資料は、詳しくは冒頭でご紹介した動画で詳しく説明していますので、ここではポイントだけの説明にしますが、所得税の計算方法を簡易にまとめたものです。

パートなどの給与収入が年103万円で、給与所得控除55万円と基礎控除48万円で課税所得がゼロとなるため、年収103万円までなら所得税がかからないとなっています。

その給与収入を年178万円、つまり103万円より75万円増えた額まで所得税がかからないようにするために、基礎控除も75万円上げて123万円にするという案があるとかないとか。

具体的な案の詳細は分かりませんが、国民民主党のホームページを見ますと、「基礎控除等の合計を103万円から178万円に引き上げ」とあります。

ですので、基礎控除だけの引き上げではないかもしれませんが、仮に年間178万円の給与収入を得た場合は、給与所得控除が61万2,000円となりますので、給与所得は116万8,000円となります。

課税所得をゼロにするために基礎控除のみを引き上げるとしましたら、こちらの表のとおり116万8,000円と、現在の48万円から68万8,000円プラスとなります。

なお、控除は給与所得控除と基礎控除以外にも色々とあります。

例えば、生命保険に加入している人は年間支払う保険料によりますが、一定の生命保険料控除というのがありますし、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金をしている人は、積立している全額が小規模企業共済等掛金控除となり、所得税を計算する際には控除として収入等から差し引いて所得が計算されます。

ただ、これらの生命保険料控除や小規模企業共済等掛金控除は、生命保険に加入したり、個人型確定拠出年金で積み立てを行ったりしている人は対象になりますが、生命保険に加入していない、あるいは今はもう保険料を払っていないという人もいるでしょうし、個人型確定拠出年金はやっていないという人もいるでしょうから、これらの控除を基礎控除等の引き上げの「等」に含めるのは違うかなぁと感じています。

そこで、基礎控除等に含めて考えられる控除がないかと考えた際に、これは含めても良いのではないかというのが社会保険料控除です。

と言いますのは、社会保険の壁とも言える106万円と130万円の壁が存在しますね。

106万円については最近のこちらの動画でお話ししましたが、パート先等において自身で社会保険に加入しないといけない年収基準で、短時間労働者の社会保険適用拡大と呼ばれるものです。

130万円についてはこちらでお話ししましたが、健康保険で世帯主等の被扶養者として加入できる年収基準でした。

つまり、今、税金の年収の壁103万円までに仕事をセーブしている人が178万円まで働くとしたら、基本的には世帯主等の扶養から外れて、自身で健康保険や公的年金といった社会保険に加入する必要が生じるんですね。

今、「基本的に」と申し上げましたが、やはり例外というのもあるかと思います。要は、年収178万円でも世帯主の健康保険等に扶養家族として加入できるケースです。

今日は、詳しくは触れませんが、世帯主等が国民健康保険組合に加入していて、その配偶者等がパートをしていてもパート先で健康保険に加入する必要がない、つまり106万円の壁にも該当しない場合というのがあるんですね。

一部例外はありますが、多くの場合で言いますと、年収178万円まで働くなら、その人は社会保険は世帯主等の扶養内ではなく、自身で加入する必要が生じます。

ですので、その社会保険料の控除を含めて、年収178万円でも所得税がかからないよう試算してみたのがこちらです。

まず、年収178万円の人がパート等をした場合の社会保険料ですが、加入する健康保険や地域、介護保険料がかかる40歳以上かによりますが、一例としまして、令和6年度全国健康保険協会愛知支部の40歳未満で試算をしました。

年収178万円ですと、賞与がない場合では月収が約14.8万円となり、社会保険料を計算する標準報酬月額は15万円となります。

標準報酬月額が15万円ですと、健康保険料は7,517円、厚生年金保険料は13,725円。そして、雇用保険が一般の事業の場合は890円となり、年間の社会保険料は約26万6,000円となります。

これを年収178万円の場合の所得税計算において、給与所得控除後の116万8,000円から差し引きますと、基礎控除額は90万2,000円で、課税所得がゼロとなります。

基礎控除額の引き上げ幅は、42万2000円となります。

国民全員が漏れなく、年収178万円まで所得税が非課税とはなりませんが、多くの人が実質的に年収178万円まで所得税が非課税となる基礎控除42万2,000円、金額を万単位にして、42万円引き上げの基礎控除90万円になるのはどうかと予測してみました。

仮に、基礎控除が42万円引き上げになったとしますと、年収が500万、700万、1,000万といった人は、「42万円×税率」分が減税となります。

所得税と住民税で20%の税率だと約8万円、50%の税率だと約20万円と、税負担に応じて減税されます。

なお、今回は所得税を中心にお話ししましたが、所得税と住民税で基礎控除の金額が異なります。

現在の制度では、所得税の基礎控除はお伝えした通り48万円ですが、住民税の基礎控除は43万円と5万円少ないです。

そのため、住民税がかかる年収基準も103万円から5万円少ない98万円となります。

この税金の壁103万円の引き上げについて、知事等が減収になるので賛成できないという意見も出ていますので、仮に所得税の基礎控除が42万円上がっても、住民税の基礎控除は37万円とかで、改正後の基礎控除の差が現在の5万円から10万円に拡がるといったこともあるかもしれませんね。

そもそも改正が本当にされるのかという話もあるかもしれませんが、改正されるなら、何がいくらになるのか、注目したいと思います。

ということで、本日は、「年収103万円の壁がいくらになるのか・・・」という勝手なシミュレーションをしてみました。ご参考まで。