2/9(金)だったかと思いますが、こんなニュースがありました。

政府はパートやアルバイトなど、短時間勤務で働く人たちが失業給付や育児休業給付などを受け取れるようにするため、雇用保険の適用対象を、1週間の労働時間が「10時間以上」の人にまで拡大することを盛り込んだ雇用保険法などの改正案を9日の閣議で決定しました。

NHKニュースより(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240209/k10014353081000.html

というニュースです。

閣議決定されたものって、内閣府ホームページに掲載されたりもするのですが、動画を撮影している2/15時点ではまだ掲載されていませんので、詳細の内容は分かりません。

ただ、厚生労働省のホームページに、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱について」という資料があり、それを確認しますと、雇用保険の適用対象者の範囲の拡大は令和10年10月1日からを予定しているようですので、4年後からというのが現在の予定のようです。

なお、雇用保険の適用対象者が週10時間以上の勤務になる改正の他にも、基本手当や教育訓練給付の改正、教育訓練休暇給付金の創設なども改正案に盛り込まれています。

まだ閣議決定の段階ですから、正式には国会で法案が可決されてからの話でしょうし、より詳しい情報が出てきましたら、また改めてお伝えしていきたいと思っています。

そこで本日は、現在の雇用保険制度について少しお話をしておきたいと思います。

現在の雇用保険制度について

パートやアルバイトをされていて健康保険や年金保険は扶養内という方でも、雇用保険だけは自身で入りたいという声、よく耳にしますので、是非ご参考にしていただきたいと思います。

さて、雇用保険というのは、働き方等で一定の要件を満たすと加入しないといけなくなるものでして、加入しますと保険料を支払う必要があります。

そして、保険料を支払うことで、失業した時や育児休業を取得した時などに給付金を受け取れるというのが雇用保険です。

この雇用保険についてので、「加入対象者」「保険料」「給付内容」の3点についてご説明していきます。

まず、加入対象者ですが、以下の2つを満たす場合に雇用保険に加入することになります。

  • 週の労働時間が20時間以上の人
  • 31日以上の雇用見込のある人

なお、被保険者にならない人に、昼間学生というのがありますので、昼間学生の方は原則的に被保険者となりませんが、通信教育、夜間、定時制の学生の方は被保険者となり得ますのでご留意ください。

また、手続きは事業主(会社)が行いますので、労働者自身が何か申請をしないといけないということはありません。

「保険料(掛金)」について

雇用保険の保険料は、企業が負担する分と労働者が負担する分がありますが、ここでは労働者負担分についてお話します。

なお、事業の種類によって異なりますが、一般の事業で労働者負担は0.6%、農林水産業・清酒製造業や建設の事業で0.7%となっています。

仮に一般の事業を行っている会社でパートやアルバイトをしていて、雇用保険に入ることになりますと、保険料率は0.6%となり、1か月の賃金(お給料)が10万円だったとしましたら、雇用保険の保険料はその0.6%ですから600円となります。

厚生年金は9.15%ですし、健康保険は加入している健康保険によりますが、概ね5%前後が一般的ですので、雇用保険の保険料負担は、様々な給付が受けられることも考えますと、それほど重くないように個人的には感じています。

ただ、正社員の方で1か月の賃金(お給料)が数十万円になりますと、雇用保険の保険料も1,000円を超えていきますので、なんかちょっと給料から引かれているなぁと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「給付内容」について

様々な給付があるのですが、本日はよく利用される給付を中心に5つ、ご紹介しておきたいと思います。

まず1つめが「基本手当」と呼ばれるものです。

これは、定年、倒産、契約期間の満了等により失業した労働者が新たな仕事を見つけるまでの間、生活を支えるために給付される手当金です。いわゆる「失業保険」と呼ばれたりするものですね。

ただ、この基本手当を雇用保険に加入していたら誰でももらえるわけではなく、雇用保険に過去2年間で12ヶ月以上加入していた人であったり、就職しようとする意思があり、かつ、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない、いわゆる「失業の状態」であったりすることなどの要件を満たす必要があります。

ですので、病気やけがのため、結婚して家事に専念するため、妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない状況の時は、その時点では基本手当はもらえないという点にはご留意ください。

さあ、この基本手当ですが、何日間もらえると思いますか。

仕事を辞めた理由、倒産や解雇にあったのか、それとも自己都合で辞めたのか。他にも、雇用保険に加入していた期間が何年であったのかとかにより異なりますが、一番少なくて90日分、最大で360日分、基本手当がもらえます。

そして、その基本手当の給付日額ですが、仕事を辞めた日の直前6か月に、ボーナスを除いて毎月支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額、平均日額給与ですね。これを専門的な言葉では「賃金日額」といいますが、その賃金日額の45~80%が基本手当の給付日額となっています。

年齢区分ごとに上限額が定められており、現在は次のとおりとなっています。

30歳未満6,945円
30歳以上45歳未満7,715円
45歳以上60歳未満8,490円
60歳以上65歳未満7,294円
賃金日額の上限

 

仕事を自身で辞めたり、あるいは契約が終わったりして辞めざる負えなくなったとしましても、賃金日額の45%~80%が一定期間受け取れるというのは有難いですよね。

私自身も今まで、転職等の際で空白期間(無職の期間)があった際には、この基本手当をもらっていて、有難かったなぁという思いがあります。

「育児休業給付金」

続きまして、雇用保険の給付として2つ目にご紹介するのは、「育児休業給付金」です。

これは、子育てをしながら働く人が、育児休業を取得した際に経済的な支援してもらえる給付金です。

育児休業給付金につきましては、いくらもらえるのかとか、育児休業中にお仕事をしたらどうなるのかなど、詳しくこちらの動画でお話していますので、確認しておきたいという方はこちらをご覧ください。

「介護休業給付金」

続きまして、雇用保険の給付として3つ目にご紹介するのは、「介護休業給付金」です。

これは、家族の介護が必要になった際に休業する労働者を経済的にサポートための給付金です。

介護休業を取得した場合に、平均賃金日額の約67%が最大93日間分もらえます。

詳しくは、こちらの動画で、介護休業給付金だけではなく、介護休業や介護休暇についてもお話していますので、よろしければご視聴ください。

「介護休業給付金」

続きまして、雇用保険の給付として4つ目にご紹介するのは、「高年齢雇用継続給付」です。

これは、文字通り、高年齢者が働き続けることを支援するものでして、年齢や雇用形態により異なりますが給与の減少分を補填する形で支給されたりします。

「介護休業給付金」

続きまして、雇用保険の給付として最後の5つ目にご紹介するのが、「一般教育訓練給付金」です。

職業能力の向上を図るための教育訓練に、参加する労働者を支援するものでして、指定された教育訓練講座を受講した場合に受講料の20%(上限10万円)が給付されます。

ただし、その20%に相当する額が、4千円を超えない場合は支給されないなど、細かな規定もありますし、「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」などもあり、給付割合や上限が異なったりしますので、教育訓練を受けてスキルアップをしようという方は、ハローワークのホームページ等で詳細をご確認ください。

ちなみに、私は、この一般教育訓練給付金をFP資格を取得する際に利用させてもらったことがありまして、お得な感じがして嬉しかったのを覚えています。

まとめ

ということで、本日は、雇用保険の加入要件が改正されて週の労働時間が10時間以上になりそうだというニュースから、雇用保険の加入対象者、保険料、主な給付内容についてお話をしてきました。

実は、雇用保険については、例えば育児休業給付金が100%給付になる・・・かも・・・など、様々な改正が予定されたり、検討されたりしていますので、詳しい情報が入り次第またこちらのコラムでもお届けしたいと思っています。

【ニュース解説】改正・雇用保険!?週10時間労働で雇用保険加入になる!?保険料負担はどれぐらい!?給付内容って何があるの!?