今、次の5つの要件を満たしたら、パート勤め、短時間労働者なんて言いますけれども、その時間労働者の方も社会保険に入ってねという国のルールがあるのはご存じでしょうか。
これを社会保険の適用拡大と言います。
その5つの条件の中の一部が2022年10月に改正され、短時間労働者、パート勤め方で社会保険に入ってねっていう方が増えます。
現在パート勤めをされている方は、お勤め先でもう案内をされているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、パート月収10万円で働いている方が法改正により社会保険に入ることになったとしたら、手取りはいくらぐらいになるのか、社会保険加入のメリットは何かなど、お伝えしていきます。
社会保険の適用拡大
まず、短時間労働者と呼ばれるパート勤めの方でも社会保険に入ってねという5つの要件は、現時点では次の通り。
①1週間の労働時間が20時間以上の人
②月の賃金が8万8000円以上の人
③2カ月を超える雇用の見込みである人
④学生でないこと
⑤パート先の従業員規模が501人以上の企業であること
この5つ全てに該当したら、もう今現在でパート勤めの方は社会保険に入らないといけないのですが、2022年(令和4年)10月から、今申し上げた5番目の従業員規模501人以上が101人以上に変わります。
そうしますと、今まで最初の4つは該当していたけど、5番目は該当してなかった人、例えば従業員規模が200人とか300人くらいの会社でパート勤めをしていた人は社会保険に入らなくてよかったのが、法改正で従業員規模が501人以上から101人以上に変わるらめ、社会保険に入らないといけなくなります。
さあ、社会保険に入ることになるとどうなるのでしょうか。
今回は大きく3つのトピックスでお話をします。
まず、1つ目に社会保険に入るメリットについて。
続いて、その社会保険加入のために手取りがどれぐらい減るのか。そして最後に厚生年金がいくらぐらい増えるのかについてお話していきます。
社会保険に入るメリット
今、どういった形で社会保険に入っているかによりますが、大きく2つのパターンがあると思います。
自身で国民健康保険と国民年金に加入している人と、配偶者や家族などの被扶養者として健康保険と国民年金に加入している人。
前者の自身で国民健康保険と国民年金に加入している人は、国民健康保険が健康保険になり、国民年金が厚生年金になります。
国民健康保険から健康保険になることで、国民健康保険にはない「傷病手当金」といった給付の対象になります。
「傷病手当金」というのは、病気やケガで何日も仕事を休むことになった際に給付金が健康保険より受けられるというものです。
詳しくは、当コラムで既にお伝えしていますので、よろしければ以下のリンクよりご覧ください。
また、国民年金が厚生年金になることで、もらえる年金が基礎年金と厚生年金の2つなりますので、増えますね。
具体的に厚生年金がいくらぐらいになるかは後程ご説明します。
続いて、後者の現在は配偶者や家族などの被扶養者として健康保険と国民年金に加入している人ですが、健康保険に自身で加入することになりますので、被扶養者では受けられなかった給付が対象になり得ます。先ほどの「傷病手当金」もそうですし、「出産手当金」などもそうですね。
「出産手当金」についても詳細を当コラムで既にお伝えしていますので、よろしければ以下のリンクよりご覧ください。
また、厚生年金にも自身で加入することになりますので、年金が増えます。これは大きなメリットだと思いますので、具体的にどれぐらい増えるのかは、後程お伝えします。
社会保険に加入すると手取りがどれぐらい減るのか
厚生年金や健康保険の掛金を計算する際には標準報酬月額というものを用います。月収10万円の方ですと、『98,000円』という標準報酬月額で厚生年金や健康保険の掛金を計算することになります。
なお、月収10万円の方の厚生年金の自己負担額は、毎月8,967円となります。
続いて、健康保険は大企業やグループ会社などで作る組合か、それ以外の一般企業が入る協会かにより異なりますが、一般企業が入る協会の愛知県で試算をしてみます。
なお、介護保険の関係で40歳未満と40歳以上で掛金が変わりますが、40歳未満の方で4,856円、40歳以上の方で5,738円が月収10万円に対する毎月の健康保険自己負担額となります。
そして社会保険には雇用保険というのもあります。
今後法改正で少し上がりますが、令和4年4月現在で一般の事業の0.3%で試算をしますと、掛金は300円となります。
以上から、社会保険料の自己負担合計は40歳未満の方で14,123円、40歳以上の方で15,005円となり、1万4,000~5,000円ほど手取りが減ることとなります。
減税になる!?
現在、月10万円のパート収入ですと、年収で120万円になりますから、所得税や住民税をお支払いになっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった方は、この社会保険の掛金分は控除されますので、税金が安くなります。
これは有難い!!
この所得税や住民税は、控除と言って、税額計算をする際に差し引いてくれるものがあるのですが、社会保険料以外にも、生命保険に加入していたり、個人型確定拠出年金のiDeCoをしていたりすると控除を受けられますので、仮に年収が同じ120万円であったとしても、人によって支払う税金額が異なります。
そのため、社会保険の掛金分でどれだけ税金が安くなるかは、そもそもの払っている税金分までしか安くはならないため個人差があります。
ですので、明確にいくら安くなりますよとは言えませんが、社会保険の掛金はパート収入が月に10万円ですと年間で17~18万円ですので、所得税を5%、住民税を10%で考えてみますと、所得税と住民税を合わせて年間で最大2.5万円ほど減税になり得ると言えます。
社会保険に加入することで、所得税と住民税を払っている人は、減税になりますので、ご参考になさってください。
厚生年金がどれぐらい増えるか
先ほど月10万円の収入だったら8,967円が毎月の厚生年金の掛金だとお伝えしました。
その8,967円を毎月を払うと、厚生年金がどれくらい増えるのかと言うと、1カ月当たり537円増えます。
ですので、月収10万円で1年働くと6,444円増え、10年働くと64,440円増え、20年働くと128,880円厚生年金が増えます。
10年働いても年間6万ちょっとしか増えないんだ・・・と思うかもしれませんが、厚生年金は生きている間ずっともらえますので、長生きすればするほど多くもらえます。
ちなみに、何歳まで生きたら払った分をもらえますかと質問を受けることがありますが、1カ月当たりの支払う掛金の8,967円を、1カ月払ったら増える年金額537円で割りますと、16.7という数字が出ます。
つまり、厚生年金を16.7年以上もらえるか否かで、払った以上もらえるかどうかになるということです。
厚生年金を65歳から受け取るとしますと、「65+16.7」で、81.7歳が分岐点ですね。
ですので、82歳以降も年金をもらい続けられればお得になると言えますね。
なお、厚生年金の掛金ではなく、健康保険と雇用保険も含めた社会保険全部の掛金だとどうなるかということもたまに聞かれますが、40歳以上の方ですと1カ月の社会保険料の支払合計額が15,005円ですので、15,005円÷537円で、27.9となります。
ですので、65歳から厚生年金をもらい始めるとしますと、「65+27.9」で、93歳まで厚生年金をもらえたら、支払った社会保険の掛金以上の厚生年金を受け取れるようになります。
まとめ
今回はパート収入が月10万円で、パート先で社会保険に入ることになったら、加入のメリットは何があるのか、加入にかかる費用がどれぐらいで手取りがいくらぐらい減るのか、厚生年金が増えるのはいくらぐらいで何歳までもらえたら払ったより多くのなるのかというお話をしてきました。
なお、関連する内容としまして、当コラムに「パートで厚生年金」というのがあります。今日少し触れた標準報酬月額だとか、今回は割愛しました年金の計算の方法にある従前額保障や再評価率ということもお伝えしていますので、詳しく知りたいという方は、そちらを是非ご覧下さい。
また、今回は社会保険についての内容でしたが、パートをされている方で税金の方の扶養を意識している方もいらっしゃると思います。そういった方は、扶養内について詳しくお話をしている、以下の「年収の壁」という当コラム記事もチェックいただけたらと思います。配偶者控除などについてお伝えしています。
■【徹底解説】パート年収の壁「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」「201万円」
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。ご参考になさってください。
ファイナンシャルプランナー&社会保険労務士 廣江淳哉