※動画でご覧になりたい方は上記の『FPパパちゃんねる』よりどうぞ。

出産育児に関する社会保障制度について、今年の令和4年はいくつか法改正があります。

例えば、育児休業が分割取得できるようになったり、産後パパ育休と呼ばれる制度が新設されたりします。

時期としましては、令和4年10月からのものが多いため、また改めてお伝えしていきたいと思いますが、本日は既に令和4年4月にもう改正がされている「有期雇用労働者、いわゆるパートや派遣、契約社員の方の育児休業取得要件緩和」についてお伝えします。

また、パートや派遣、契約社員としてお仕事をされている方が育児休業を取得するには、ここをチェックしてくださいという点もお伝えします。

有期雇用労働者とは

有期雇用労働者というのは、3カ月とか半年とか1年など、一定の期間が定められて働いている人のことを言います。

派遣や契約社員として働いている方はまず該当すると思いますし、パートで働いている方も一部の方は無期雇用といって期間の定めがない契約をされている方もいらっしゃるでしょうが、1年ごとなどで更新という契約でお仕事をされている方々は、有期雇用労働者に該当します。

有期雇用労働者の育児休業取得要件緩和

有期雇用労働者が育児休業を取得しようと思うと、令和4年3月までは、次の2つの要件を満たす必要がありました。

「引き続き雇用された期間が1年以上あること」と「子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合」の2点です。

それが今年、令和4年4月以降は、1つ目の「引き続き雇用された期間が1年以上あること」が撤廃され、「子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合」のみが、有期雇用労働者の育児休業取得の要件となりました。

これは、正社員などの無期雇用の方と、同様の育児休業取得要件になったということです。

子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合

ここでポイントになるのが「子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合」です。

例えば、妊娠が分かって、その子が生まれてきて1歳6カ月になる頃というと、その妊娠が分かった時点から少なくとも1年6カ月以上先、大体は2年前後先のことになりますね。

そうしますと、6カ月や1年といった雇用期間の契約で働いていた場合は、妊娠が分かった時点で契約している雇用期間は、生まれてくる子が1歳6カ月の時には当然ながら終了していることになります。

そうなりますと、パートや派遣・契約社員などの有期雇用労働者は育児休業が取れないかというと、そうでありません。

なぜかというと、「更新」があるからです!!

パートや派遣・契約社員などの有期雇用労働者に対しては、「契約の締結時(要は働くことが決まった際)に、その契約の更新の有無を明示しなければならない」というルールがあり、その更新有無を確認する方法としては『労働条件通知書』があります。

働くのが決まった際に、何時から何時まで働いて、時給やお給料はいくらで、nなどの文字通り働く条件が書いてある書類です。

この『労働条件通知書』に契約期間も書いてあり、その期間が満了を迎えた際に更新があるかないかの記載も基本的にあります。

そこに、「更新の可能性あり」と記載があれば、「子が1歳6カ月の時点で契約が満了することが明らかでない」と言えますので、パートや派遣、契約社員の方でも育児休業が取得し得るということになります。

更新上限の記載に要注意

ただ、更新回数の上限が明示されているケースもあり、その際は要注意です。

と言うのは、育児休業取得のためには、更新上限まで契約が更新された場合の契約期間末日がポイントになるからです。

生まれてくる子が1歳6カ月になるまでに更新上限の契約期間末日が来るあ場合は育児休業は取得できず、生まれてくる子が1歳6カ月になる日以降に更新上限の契約期間末日が来る場合は育児休業を取得することができると言えます。

イメージしやすいように、このような図をご用意しました。

仮に、更新上限が2回となっている場合ですと、その2回更新した際の契約期間末日が、生まれてくる子の1歳6カ月の前にあるか後にあるかということです。

上の例ですと、更新上限の契約期間末日が、生まれてくる子の1歳6カ月より前ですので、このケースは育児休業が取得できません。

一方、下の例ですと、更新上限の契約期間末日が、生まれてくる子の1歳6カ月より後ですので、育児休業は取得し得ると言えます。

労使協定がある場合は除外規定に要注意

上述した法改正により撤廃された「引き続き雇用された期間が1年未満の労働者」という規定ですが、実は、労使協定で除外規定として設けることができるというルールもあります。

労使協定というのは、「労働者」と「使用者(会社)」が協定を結び、ルールを決めるというものです。

もし、パートや派遣・契約社員などの有期雇用で働いていて、働き始めてから1年以内に妊娠が分かったという際は、お勤め先等の労使協定で育児休業に関して「引き続き雇用された期間が1年未満の労働者を除く」という除外規定がないかは確認されることをお勧めします。

信じてはいけない「派遣で育休は取れません」

これは私の経験談ですが、10年以上前に派遣会社で営業の仕事をしていたことがあります。

私だけ、私が働いていた会社だけ、かもしれませんが、派遣で働いている方が育児休業を取れるとか、当時は全く知りませんでしたし、社会保障制度に関する社内研修とかもありませんでした。

ですので、もし派遣でお仕事をされている方で、派遣会社に育児休業を取得したいと連絡したら「派遣で育休は取れませんよ」なんて言われることがあるかもしれません。

それは、その担当者が知らないだけで、本日お伝えした内容は法律ですから、要件を満たせば、派遣でお仕事をされている方も育児休業が取得できますので、安心してください。

労使協定で「引き続き雇用された期間が1年未満の労働者を除く」という除外規定がお勤め先になければ、「生まれてくる子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合」という要件のみを満たせば、パートでも派遣でも契約社員でも育児休業が取得できます。

育児休業が取得できたら・・・

育児休業が取得できますと、育児休業中に雇用保険から育児休業給付金がもらえたり、育児休業中の社会保険料が免除になったり、当然ながら仕事復帰もしやすくなったりしますので、家計にとっても非常に大きな影響がありますね。

育児休業中の社会保険料免除に関して確認しておきたいという方は、以下の当コラム内記事をご覧ください。

産休・育児休業中の社会保険料免除

まとめ

今回は、育児休業法の令和4年改正ポイントの中から、パートや派遣・契約社員など、一定の期間が定められた契約でお仕事をしている有期雇用契約の方の育児休業取得要件緩和についてお話してきました。

なお、今年10月に改正される育児休業法のお話も改めてお伝えしたいと思います。

ファイナンシャルプランナー&社会保険労務士 廣江淳哉