今日は、この質問にお答えしていきたいと思います。
パート先で、厚生年金と健康保険には加入せず、雇用保険だけ入ることってできますか?
これ、ちょいちょいいただく質問なんですね。
ご質問いただいた方全員に確認したわけではありませんが、厚生年金と健康保険は、扶養内のままで加入しておき、雇用保険だけは自身で加入したいということのようですね。
厚生年金と健康保険は保険料(掛金)の負担も大きいですよね。ザックリとイメージでお伝えするなら、お給料の約15%。
仮に、パート月収が10万円だったら、15,000円ぐらいが厚生年金と健康保険の保険料になるので、手取りが大きく減りますね。
確かに自身で入れば、厚生年金が増えたり、健康保険の傷病手当金が対象になったりと、社会保障が手厚くなるメリットはありますが、メリットよりも保険料負担の方が重く感じるという人もたくさんいらっしゃるように感じています。
一方、雇用保険は、保険料は事業の種類にもよりますが、一般の事業ですと、令和5年4月1日からは0.6%。
仮に、パート月収が10万円だったら、600円ですね。この金額だとそれほど負担感もないかなぁと感じる人も多いかもしれませんし、雇用保険は加入しておくと、一定の要件を満たせば、失業した際に失業等給付、いわゆる失業保険がもらえたり、職業訓練が受けられたりしますし、あるいは育児休業給付金や介護休業給付金がもらえたりもしますので、雇用保険は入っておきたいという人も多いんですね。
パート先で、厚生年金と健康保険には加入せずに、雇用保険だけ入ることってできるのか?
そうしますと、パートをしている方がパート先で、厚生年金と健康保険には加入せずに、雇用保険だけ入ることってできるのか・・・という話です。
結論から申し上げますと、できなくはないけど、今はかなり限定的になりつつある・・・という状況です。
全くできないわけではありませんので、どういう働き方だと、厚生年金と健康保険には加入せずに、雇用保険だけ入ることができるのかをお伝えしていきたいと思います。
厚生年金と健康保険、そして雇用保険の加入要件
まず、厚生年金と健康保険、そして雇用保険の加入要件を確認しておきましょう。
厚生年金と健康保険
厚生年金と健康保険ですが、パートのなどの短時間労働者が加入となる基準には大きく2つあります。
1つ目が、3/4基準。
1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上
2つ目が、2022年10月に法改正もありました「短時間労働者の社会保険適用拡大」でして、次の5つの要件を「全て」満たす場合は、1つ目の3/4基準を満たしていなくてもパート先で厚生年金と健康保険に加入しないといけないという制度ですね。
その5つの要件が
- 1週間の労働時間が20時間以上の人
- 月の賃金が8万8000円以上の人
- 2カ月を超える雇用の見込みである人
- 学生でないこと
- パート先の従業員規模が101人以上の企業であること
雇用保険の加入要件
さらに、雇用保険の加入要件は、次の2つのいずれにも該当する場合です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
ですので、厚生年金と健康保険には加入せずに、雇用保険だけ入ろうと思えば、厚生年金と健康保険の要件は満たさずに、雇用保険の要件を満たすように働く必要があるということですね。
雇用保険の加入要件は、「週20時間以上」と「31日以上の雇用見込み」ですので、まずは、これは必ず満たす必要がありますよね。
その上で、短時間労働者の社会保険適用拡大は要件5つを全て満たす場合に厚生年金と健康保険に加入となるので、5つの要件を全てを満たさないように働くということが必要になりますね。
1つ目の要件の「1週間の労働時間が20時間以上」は雇用保険の要件と被りますから、これは満たしてしまいますね。
2つ目の「月の賃金が8万8000円以上」はどうでしょうか。
パートの時給と週何時間働くかによりますが、仮に時給1,000円で週20時間の雇用契約で働いたとしますと、週2万円の給与となり、年間52週で計算しますと年収は104万円。この年収104万円を年間の月数である12で割りますと月収86,667円となり、88,000円以上とはならないので、厚生年金と健康保険に加入せずに済むかなぁ・・・と考えられます。
ただ、時給がもう少し高かったり、週の労働時間が20時間より長かったりすると、月額賃金88,000円以上になるかなぁと思われますので、そうなるとこの2つの要件を満たすことになってしまいますので、自身の雇用契約の内容をご確認いただくとよろしいかと思います。
そして、3つ目の要件が「2カ月を超える雇用の見込み」ですが、長期で働くことを想定しますと、この要件は満たしてしまうのかなぁと思いますが、仮に週20時間で1カ月半だけ働くとかですと、雇用保険は31日以上だから要件を満たすでしょうし、短時間労働者の社会保険適用拡大は2カ月だから要件を満たさないでしょうから、厚生年金と健康保険には加入せず、雇用保険のみに加入となりますね。これはかなりレアなケースかもしれませんねぇ・・・。
そして、4つ目の要件が「学生でないこと」ですが、これは厚生年金と健康保険に加入せず、雇用保険のみに加入するために、わざわざ学生になるという方はそうそういないと思いますので、この辺にしておきます。
ただ、今、学生の方は、少し注意が必要ですよ。
厚生年金と健康保険に加入となる2つの基準の内の1つである短時間労働者の社会保険適用拡大は学生でないことが要件ですので、学生の方は対象外となりますが、もう1つの基準である「3/4基準」の方は学生を除くなどと明記はされていませんので、その点はご留意ください。
さあ、最後5つ目の要件が「パート先の従業員規模が101人以上」ですね。
この要件が、個人的には一番満たさない形にしやすいかもしれないと感じています。
厚生年金と健康保険に加入せず、雇用保険のみに加入したいなら、規模の小さい会社で働くというのも1つの方法ですね。
ちなみに、従業員規模が101人以上ですが、厚生労働省のパンフレットなどの表現と合わせて、「従業員」と説明では使っていますが、正確には「短時間労働者を除く厚生年金・健康保険の被保険者の総数が常時100超の事業所」となります。
すると、事業所って何なのという疑問を持たれる方がいるかもしれませんので、日本年金機構HPに掲載されている『短時間労働者の社会保険適用拡大に関するQ&A集』から引用させていただき、補足をしておきます。
問6 使用する被保険者の総数が常時 100 人を超えるか否かの判定は、適用事業所ごとに行うのか。
(答)使用する被保険者の総数が常時100人を超えるか否かの判定は企業ごとに行いますが、具体的には以下のいずれかの考え方で判定します。
① 法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時 100 人を超えるか否かによって判定します。
② 個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時 100 人を超えるか否かによって判定します。
日本年金機構HP『短時間労働者の社会保険適用拡大に関するQ&A集』より
つまり、その会社に勤める厚生年金と健康保険の被保険者の総数ではありますが、確認していただきたいポイントとしましては「① 法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する」というところですね。
例えば、フランチャイズ店でパートをしていたら、どこと雇用契約を結んで働いているかにもよりますが、本体の方ではなく、フランチャイズ店を経営している会社と雇用契約を結んでいるなら、そのフランチャイズ店を経営している会社に勤める厚生年金と健康保険の被保険者の総数となるということですね。
なお、この100人超、101人以上ですが、2024年10月には改正があり、50人超、51人以上となりますので、ご留意いただければと思います。
まとめ
本日は、厚生年金と健康保険に加入せず、雇用保険のみに加入したいけど可能かというご質問にお答えする形でお話をしてきました。
1つの方法としては、従業員規模が100人以下のところで働くことで、現時点ですと短時間労働者の社会保険適用拡大の要件を満たさずに、かつ雇用保険の要件は満たすという働き方があるのかなぁと思います。
ただ、従業員規模が100人以下の会社であっても、働きすぎますと3/4基準の方で、厚生年金と健康保険の加入になることもあり得ますので、その点はご注意いただければと思います。